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大切にされてるよなぁ。
「……やられた」
目の前にある自分の自転車を見て絶句した。
六月に入って何本目だろうか。自転車に差しっぱなしの傘を盗まれるのは。
駅の定期駐輪場はいつでもどこでも一杯で、だからと言って毎日毎日百五十円を払って一時駐輪なんかしていられない。
だから、そこらのスーパーの駐輪場に違法駐輪して学校に行くんだけど……。
その代償と言わんばかりに一緒に置いて行く傘が盗まれる。夕方、雨が突然振り出す日。
「日和(ひより)、せめて帰りに雨が降るって日は傘くらい持ち歩けよ。それか折りたたみ傘を携帯しろ」
帰りの電車が一緒になる圭介は私の右隣で呆れた顔をしていた。
圭介の手にはしっかりと自前の傘が握られていて、駅の改札口からここまで来るのに傘を持っていない私の体も守ってくれた。
「傘って荷物になるから嫌いなんだよー……。行きに降ってるならまだしも帰りだけ降るならいちいち持ち歩きたくない!」
「だからこういう目に遭うんだろうが。どうするんだよ、傘買うならそこのコンビニでいいだろ」
「じゃあ圭介の傘貸して! 家に帰ったら返す」
「冗談はその頭の中身だけにしろ」
つむじの辺りに容赦なく空手チョップが降ってきた。防御が一瞬間に合わず直撃。軽く打っているとは思うがやはり痛い。
「痛い……」
「色々と天罰だ。この前俺のマグカップ割りやがって」
「あ、やっぱり根に持ってる。あの時は強がりで「別にいいよ」なんて言ってたのね」
今度は頬をつねられた。いいじゃん、ちゃんと新しいの買って来たんだから!
「ほら。今日は俺が買ってやるから。行くぞ」
「いいの?」
「ただしそれが盗まれたら泣かす。色んな意味で泣かす」
『色んな意味』の種類を幾つか考えてみようとしたけど無理だった。
優しそうな顔をしていて実はドSな圭介の思考回路なんて全く想像出来ない。
「日和」
頭の上にあった傘が離れようとしていた。置いて行くぞと背を向けていた圭介が促す。
自転車はそのままで、置いて行かれないように手を握って左隣を歩いた。
「どうせなら可愛いやつ買って貰おうかなー。北口にあるショップのやつ」
「あそこの千円で買えねぇだろうが」
「えー、二千円くらい可愛い彼女に出してよ」
「分かった。コンビニのビニール傘(三百円)な」
歩が迷いなくコンビニに向かっている。ビニール傘なんてありがたみがない!
しかも絶対に盗まれる! だって確実に自転車の置き傘になるもん!
「コンビニの可愛くない……。せめて三百均の可愛いやつがいい……」
「あそこ少し歩くじゃんか」
「今年の梅雨の間ずっと使うんだよ! 折角圭介から貰うんだから可愛いやつがいい!」
「夏は使わねぇのか」
「雨晴兼用の日傘使うもん。日焼け厳禁!」
本日二度目のため息が聞こえた。「しょうがねぇなぁ……」と言いながら方向転換。コンビニから離れて行った。
「自転車に差しっぱなしにしても泣かすからな」
「そうしたら使う機会、今日だけになるよ」
「愛しい彼氏から貰った物なんだから大切に且つ何度でも使え」
またチョップが降ってくるかと思ったら今度は軽く撫でられた。
そういえば、あんまり大きくない傘なのに私あんまり濡れてない。代わりに圭介の右肩が濡れているのに気付く。
大切にされてるよなぁ。
「ねぇねぇ、これより大きい傘買って今日はあいあい傘で帰ろ。で、この傘私にちょうだい」
「は? この傘完全男物だぞ。全然可愛くないぞ。しかもお前自転車どうするんだよ。俺は元々歩きだからいいけど」
「いいよ。今日くらいお金払って置いて行く」
これから雨の季節だから、貰う傘は沢山使う事になるだろう。
新しいのもいいかもしれないけど、今日みたいな嬉しい思い出を、使う度に思い出せる方がいい。
目の前にある自分の自転車を見て絶句した。
六月に入って何本目だろうか。自転車に差しっぱなしの傘を盗まれるのは。
駅の定期駐輪場はいつでもどこでも一杯で、だからと言って毎日毎日百五十円を払って一時駐輪なんかしていられない。
だから、そこらのスーパーの駐輪場に違法駐輪して学校に行くんだけど……。
その代償と言わんばかりに一緒に置いて行く傘が盗まれる。夕方、雨が突然振り出す日。
「日和(ひより)、せめて帰りに雨が降るって日は傘くらい持ち歩けよ。それか折りたたみ傘を携帯しろ」
帰りの電車が一緒になる圭介は私の右隣で呆れた顔をしていた。
圭介の手にはしっかりと自前の傘が握られていて、駅の改札口からここまで来るのに傘を持っていない私の体も守ってくれた。
「傘って荷物になるから嫌いなんだよー……。行きに降ってるならまだしも帰りだけ降るならいちいち持ち歩きたくない!」
「だからこういう目に遭うんだろうが。どうするんだよ、傘買うならそこのコンビニでいいだろ」
「じゃあ圭介の傘貸して! 家に帰ったら返す」
「冗談はその頭の中身だけにしろ」
つむじの辺りに容赦なく空手チョップが降ってきた。防御が一瞬間に合わず直撃。軽く打っているとは思うがやはり痛い。
「痛い……」
「色々と天罰だ。この前俺のマグカップ割りやがって」
「あ、やっぱり根に持ってる。あの時は強がりで「別にいいよ」なんて言ってたのね」
今度は頬をつねられた。いいじゃん、ちゃんと新しいの買って来たんだから!
「ほら。今日は俺が買ってやるから。行くぞ」
「いいの?」
「ただしそれが盗まれたら泣かす。色んな意味で泣かす」
『色んな意味』の種類を幾つか考えてみようとしたけど無理だった。
優しそうな顔をしていて実はドSな圭介の思考回路なんて全く想像出来ない。
「日和」
頭の上にあった傘が離れようとしていた。置いて行くぞと背を向けていた圭介が促す。
自転車はそのままで、置いて行かれないように手を握って左隣を歩いた。
「どうせなら可愛いやつ買って貰おうかなー。北口にあるショップのやつ」
「あそこの千円で買えねぇだろうが」
「えー、二千円くらい可愛い彼女に出してよ」
「分かった。コンビニのビニール傘(三百円)な」
歩が迷いなくコンビニに向かっている。ビニール傘なんてありがたみがない!
しかも絶対に盗まれる! だって確実に自転車の置き傘になるもん!
「コンビニの可愛くない……。せめて三百均の可愛いやつがいい……」
「あそこ少し歩くじゃんか」
「今年の梅雨の間ずっと使うんだよ! 折角圭介から貰うんだから可愛いやつがいい!」
「夏は使わねぇのか」
「雨晴兼用の日傘使うもん。日焼け厳禁!」
本日二度目のため息が聞こえた。「しょうがねぇなぁ……」と言いながら方向転換。コンビニから離れて行った。
「自転車に差しっぱなしにしても泣かすからな」
「そうしたら使う機会、今日だけになるよ」
「愛しい彼氏から貰った物なんだから大切に且つ何度でも使え」
またチョップが降ってくるかと思ったら今度は軽く撫でられた。
そういえば、あんまり大きくない傘なのに私あんまり濡れてない。代わりに圭介の右肩が濡れているのに気付く。
大切にされてるよなぁ。
「ねぇねぇ、これより大きい傘買って今日はあいあい傘で帰ろ。で、この傘私にちょうだい」
「は? この傘完全男物だぞ。全然可愛くないぞ。しかもお前自転車どうするんだよ。俺は元々歩きだからいいけど」
「いいよ。今日くらいお金払って置いて行く」
これから雨の季節だから、貰う傘は沢山使う事になるだろう。
新しいのもいいかもしれないけど、今日みたいな嬉しい思い出を、使う度に思い出せる方がいい。
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