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twitterでちまちま書いていたtwnovelのまとめです。
好きなだけじゃどうにもならないっていうけど、今の私にはそれしか伝えられるものもあげられるものもない。でもあなたが欲しくて欲しくてどうしたらいいか分からない。好きが駄目なら、愛してるなら、いいの? 傍にいて私が私でいられる? お願いあなたに触れ続けたいの。
氷が溶けたみたいに笑った彼女を見て、彼女を見守り続けた彼は何度も礼を言った。俺はそっけなく答える。「別に、欲しかったから振り向かせただけだ」もう抱き締められない愛を追っていた彼女を。愛に奪われ、過去に置き去りにされていた笑顔を。
誰かと同じベッドで寝るなんて子どものころ以来で、温かくて、なんだかくすぐたかった。「手握っていい?」「いいよ」空いている手で髪を撫でられる。どうしよう、嬉しくて現実がどんどん滲んでいってしまいそう。「自分には勿体無いとか思うなよ? 俺がお前に優しくしたいだけだ」
「ねぇ、何この体勢」今、私の背中には大きな抱っこちゃんが抱きついている。「早くメール終わんないかなぁって」「そんなに見られたら打てないわよ」「読まないから大丈夫だって」そういうことじゃなくて、耳にかかる吐息、が。「早くお姉さんをその気にさせたいんだけど、まだ?」
バイト先を出たら猛吹雪で店に戻りたくなったけど、店を閉めたい店長は早く帰れと顔で言っている。「もう春だよな? なにこれ」「北国なめんな。春なんて当分先だ」生まれた時からこの土地に住む奴はさくさく歩を進める。少し離れると見失ってしまいそうなくらい、視界が白かった。
「終点かー。こっからどうすっか」「お金もないしね」「あとバス片道二人分くらい」「ここ漁業の町みたいだから何か仕事あるかも」「かけおちしたんで住み込みで雇ってくださいってか?」「そうそう、前に漫画で読んだ!」「はは、いいなそれ」笑っていられる今はまだ、夢物語。
コップが散り散りになる音が響いて、足元に破片が飛んできた。小さいけど鈍い痛みが足の甲に引っかかる。割った本人は大き目の破片を拾い上げて切っ先をこちらに向けた。「切る?」「切る」抵抗も後ずさりもする気がなかった。「あたしを殺したら、ちゃんと後からついてくるんだよ」
「お断りします」そう、ここできっぱり拒否しないと。「俺の頼み、聞いてくんないの?」「聞けません。今後なにも」目を逸らしたら負け。ひるんでも負け。「ふぅん」顔が耳元に急接近した。「お前はずっと俺のもんだと思ってたのに、どこの野犬にほだされたわけ?」身震いがした。
「好きだよ」伝えたって届かないことは分かっている。彼は今私に背を向けているから。彼が大切にすると決めた人を見ているから。お幸せに、なんて願えるほど私はできた人間じゃないけど、今ここで踏みとどまっている両足と涙をいつか褒めてあげたい。「好きだよ。ずっと。ばいばい」
電車で隣に座る人のイヤホンから音楽が漏れ聞こえて来た。注意しようとしたが、漏れてくる曲に聞き覚えがあることに気付く。硬直する私に気付いた隣人は不審そうな視線を注いだ。「あの、音漏れ、してます」電車が止まると降りる駅でもないのに下車した。頭の中が揺れる。あの曲は、
「桜は咲いたの?」ろくに口を利かない君が珍しく話しかけてきた。「咲いたよ。ニュースやってなかった?」「ここからは見えないもの。ねぇ、窓から見える位置に桜植えてよ」時間がかかるよ、とは言えなかった。「咲くまで数十年? 一生この病室に居るだろうから、余裕で待てるわ」
数十年が経って桜が咲きました。数十年が経ってあの人はここに来なくなりました。数十年が経って私はやっと気付きました。春の訪れなんてどうでもよかったこと。あの人が会いに来てくれるだけで充分だったこと。あと数年すればここから出られます。あの人に会いに行けるのです。
「私がまだ子どもなのは知っています。じゃあ、何歳になったら私を見てくれますか?」「俺が死んだ時のお前の年齢」一筋縄でいかないことは分かっている。傍に寄り、だらしなく締められているネクタイを解いた。彼の首に巻きつける。「じゃあ、今見てもらうこともできますね」
「もういいじゃん、そんな人のアドレス消してよぉ!!」発作のように彼女は暴れ、俺の携帯からある人物のアドレスを削除する。後日、登録し直したアドレスを見て彼女は謝り倒すかまた暴れた。おままごとのような情事が繰り返されて二年。彼女に慰謝料を払える能力は、恐らくない。
カレンダーの日付を潰す日々はもう飽きた。今のページを破り捨てられるまであと二日。「というわけで、高校辞めます。留年しそうだし」「……は?」「卒業するまで社会的に同等じゃないなんて耐えられないもの。だから、今のカレンダーを破ったらここを出て先生を手に入れます」
「スマイルください!」「はい」「違う、あーくんがあたしにくれる笑顔はそんなんじゃない。営業スマイルなんて返品よ!」何で営業中に真心スマイルが必要なのか。「でもあたし以外の前でちゃんとスマイルしたらダメだよ? したら刺す」そろそろ業務妨害で訴えようかこの恋人。
煙草の匂いは嫌い。でも、事の後に煙草を吸う彼の横顔は好きで、ずっと見ていたかった。「ん? 灰なら落とさねぇから安心しろって」「私も吸いたい」「だぁめ。お子様はあと二年待ちなさい。二年経ってもこんなもん吸わなくていいけど」違うよ、今あなたが吸ってるのが、欲しいの。
「なぁ」その日はいつものように、ソファに並んで座っていて。「んー?」あいつは共通で好きなアーティストの新曲に夢中で。「キスしていいか?」身体は音楽に合わせて小刻みに揺れていて。「ん?」俺はあいつの腕を引っ張って。「もう耐えるの、飽きたわ」あいつは目を見開いて。
「なぁ知ってた? 三位一体ってどっかのお偉いさんとその嫁と嫁の愛人が仲良くやっちゃってたことを言うらしい」「なにそれ? 節操なーい」「お前が言うなよ」「それで言ったらあたし達全員ろくでなしじゃない? 一ヶ月ごとに男女問わず相手交代だなんて」「その内バチあたるな」
ばいばい、と別れた後、見えなくなるまで見送ろうとしたけれどできなかった。ここが彼と私の境界線なんだと思ったら居られなくなったから。その場から駆けて、でもどこに行けばいいか分からなくて、直感で進んだ先には散りかけの桜の木。この木が満開だった頃、私達は交わったのに。
「先輩、アイス食べます?」残業しているととっくに帰ったはずの後輩が顔を覗かせた。「どうしたのこんな時間に?」「寝不足と眼精疲労で酷い顔になる先輩をちょっとでも楽にしてあげようかなぁと」どつこうと思ったけれど、持ってきたアイスが私の大好物だったから許すことにした。
雨の中、そこに立つ君がどんな顔をしていたかは分からない。しゃがむことも、手を合わせることもなくただ僅かにも動くことなく立ちすくんでいて。見つけてあげなければよかったと後悔した。「――行こっか」こちらを向けた彼女は笑っていたけど、雨の雫で泣いているように見えた。
本当だと答えたら舌噛み切って死んでやろうと思った。「ねぇ、八つ年上の人と付き合ってるって本当?」「うん」あまりにも気の抜けた声だったから死ぬ気が失せてしまった。「飽きられてすぐ捨てられちゃうよ。その前にふりなよ」彼はただ笑うだけだった。「そん時はそん時じゃね?」
あの頃、こうして彼と居酒屋の片隅でグラスをぶつける様を想像した事があっただろうか。「先輩と会ってんの?」「まさか。あんたと会うのが一年に一回だよ? 最後に会ったの二年前」いくらでもできたはずだ。けどそれをしなかったのは、未来なんて必要くらい日々が輝いていたから。
「おかえり」予想はしていたけれど、思った以上に機嫌が悪かった。「男との飲みは楽しかったですか?」「思い出話してきただけだよ」この人とはその内別れるな、直感がそう告げた。後ろから抱きつく。「今この瞬間だって、いつかは思い出になるんだよね」思い出したいかは別として。
意識されてないだろうと思ってた幼馴染に告白したらあっさりOKを貰えた。「え、ほんまにええの?」「……じゃあ断ればええの?」「や、それは嫌やけど、だって」「そういう風に考えてないとか、勝手に決めんといて。私の方が絶対、先に好きやった。ずっと、ずーっと好きやった!」
わざわざ家にまで来て別れの言葉を告げていった奴をベランダから罵倒した後、足に力が入らず部屋に戻ってすぐ座りこんだ。こんな所でのんびりしている暇はない、やることは山積み、落ち込んでないしましてや涙腺が刺激されることもない。それでも。「負け惜しみなんて、誰が言うか」
なんとなく伸ばした髪を好きだと言って、何度も撫でてくれる手が本当に好きで。「勝手に切ったら怒られそうね」「怒るな。勝手なことさせないためにも監視するか」けれど一番好きなのは髪をいじる手じゃなくて、惜しみなくその感情を与えてくれる抱擁。「一緒にいるか、ずっと」
「うーみぃーーーー!」「叫ぶな恥ずかしい!」自転車の後ろに君を乗せて、毎日通る急な坂道を駆け降りる。「これ楽しい。これから通学は頼んでいい? 帰りも」「冗談言うな。帰り地獄じゃねぇか」「わかんないかなぁ、毎日一緒に居たいってことなのに」行きはよいよい。帰りは、。
部屋の電灯が切れた。けれどパソコンを付けているから問題ない。部屋のドアの前に置かれていた食事がなくなった。餓死してもいいと思ってたから問題ない。自分とは対照的に外で一所懸命に働く親友が事故に遭ったとtwitter経由で連絡がきた。迷うことなく部屋から飛び出した。
エレベーターに押し込められた。営業終了後の展望台、監視カメラはオフ、途中乗車もない。箱の中で数分間二人きり。「俺もう、お前を殺しちまいたい」逃げ場のない場所で命を脅かされた。けれど怖くない。「いいよ、ここで殺してくれるなら」ここは、あなたを陥れる完全犯罪現場。
「どう?」「マズイ」通算十回目になる料理査定はまたも不合格だった。「嘘でもいいから一回位『お前の作ったのなら何でも美味いよ』とか言えない?」「マズイもんはマズイ」いつか合格する日は来るのかな。「つーかさ、お前が作れないなら俺が作るから。こんなんで結婚躊躇すんな」
以前より十分早く起きて君の寝顔を見る朝が日常になった。ポストから新聞を取って、コーヒーメーカーの電源を入れて。テレビはうるさいからまだ付けない。顔を洗って歯を磨いたころに君が寝ぼけ眼で起きてくる。勝手に浮かぶ笑顔ってこういうことだったのかと、毎日噛みしめる。
今更君の何を知ったところで失望しないのに、臆病に隠すから私も何も言えなくなってしまった。ずっと一緒にいるのに好きさえ言えない。いっそ離れてしまえば二人とも幸せだと思う。「これからもこのまま?」第三者は皆こう言うから、いつもこう答えた。「もういいのよ、幸せなんて」
(2011.04.01~04.30)
氷が溶けたみたいに笑った彼女を見て、彼女を見守り続けた彼は何度も礼を言った。俺はそっけなく答える。「別に、欲しかったから振り向かせただけだ」もう抱き締められない愛を追っていた彼女を。愛に奪われ、過去に置き去りにされていた笑顔を。
誰かと同じベッドで寝るなんて子どものころ以来で、温かくて、なんだかくすぐたかった。「手握っていい?」「いいよ」空いている手で髪を撫でられる。どうしよう、嬉しくて現実がどんどん滲んでいってしまいそう。「自分には勿体無いとか思うなよ? 俺がお前に優しくしたいだけだ」
「ねぇ、何この体勢」今、私の背中には大きな抱っこちゃんが抱きついている。「早くメール終わんないかなぁって」「そんなに見られたら打てないわよ」「読まないから大丈夫だって」そういうことじゃなくて、耳にかかる吐息、が。「早くお姉さんをその気にさせたいんだけど、まだ?」
バイト先を出たら猛吹雪で店に戻りたくなったけど、店を閉めたい店長は早く帰れと顔で言っている。「もう春だよな? なにこれ」「北国なめんな。春なんて当分先だ」生まれた時からこの土地に住む奴はさくさく歩を進める。少し離れると見失ってしまいそうなくらい、視界が白かった。
「終点かー。こっからどうすっか」「お金もないしね」「あとバス片道二人分くらい」「ここ漁業の町みたいだから何か仕事あるかも」「かけおちしたんで住み込みで雇ってくださいってか?」「そうそう、前に漫画で読んだ!」「はは、いいなそれ」笑っていられる今はまだ、夢物語。
コップが散り散りになる音が響いて、足元に破片が飛んできた。小さいけど鈍い痛みが足の甲に引っかかる。割った本人は大き目の破片を拾い上げて切っ先をこちらに向けた。「切る?」「切る」抵抗も後ずさりもする気がなかった。「あたしを殺したら、ちゃんと後からついてくるんだよ」
「お断りします」そう、ここできっぱり拒否しないと。「俺の頼み、聞いてくんないの?」「聞けません。今後なにも」目を逸らしたら負け。ひるんでも負け。「ふぅん」顔が耳元に急接近した。「お前はずっと俺のもんだと思ってたのに、どこの野犬にほだされたわけ?」身震いがした。
「好きだよ」伝えたって届かないことは分かっている。彼は今私に背を向けているから。彼が大切にすると決めた人を見ているから。お幸せに、なんて願えるほど私はできた人間じゃないけど、今ここで踏みとどまっている両足と涙をいつか褒めてあげたい。「好きだよ。ずっと。ばいばい」
電車で隣に座る人のイヤホンから音楽が漏れ聞こえて来た。注意しようとしたが、漏れてくる曲に聞き覚えがあることに気付く。硬直する私に気付いた隣人は不審そうな視線を注いだ。「あの、音漏れ、してます」電車が止まると降りる駅でもないのに下車した。頭の中が揺れる。あの曲は、
「桜は咲いたの?」ろくに口を利かない君が珍しく話しかけてきた。「咲いたよ。ニュースやってなかった?」「ここからは見えないもの。ねぇ、窓から見える位置に桜植えてよ」時間がかかるよ、とは言えなかった。「咲くまで数十年? 一生この病室に居るだろうから、余裕で待てるわ」
数十年が経って桜が咲きました。数十年が経ってあの人はここに来なくなりました。数十年が経って私はやっと気付きました。春の訪れなんてどうでもよかったこと。あの人が会いに来てくれるだけで充分だったこと。あと数年すればここから出られます。あの人に会いに行けるのです。
「私がまだ子どもなのは知っています。じゃあ、何歳になったら私を見てくれますか?」「俺が死んだ時のお前の年齢」一筋縄でいかないことは分かっている。傍に寄り、だらしなく締められているネクタイを解いた。彼の首に巻きつける。「じゃあ、今見てもらうこともできますね」
「もういいじゃん、そんな人のアドレス消してよぉ!!」発作のように彼女は暴れ、俺の携帯からある人物のアドレスを削除する。後日、登録し直したアドレスを見て彼女は謝り倒すかまた暴れた。おままごとのような情事が繰り返されて二年。彼女に慰謝料を払える能力は、恐らくない。
カレンダーの日付を潰す日々はもう飽きた。今のページを破り捨てられるまであと二日。「というわけで、高校辞めます。留年しそうだし」「……は?」「卒業するまで社会的に同等じゃないなんて耐えられないもの。だから、今のカレンダーを破ったらここを出て先生を手に入れます」
「スマイルください!」「はい」「違う、あーくんがあたしにくれる笑顔はそんなんじゃない。営業スマイルなんて返品よ!」何で営業中に真心スマイルが必要なのか。「でもあたし以外の前でちゃんとスマイルしたらダメだよ? したら刺す」そろそろ業務妨害で訴えようかこの恋人。
煙草の匂いは嫌い。でも、事の後に煙草を吸う彼の横顔は好きで、ずっと見ていたかった。「ん? 灰なら落とさねぇから安心しろって」「私も吸いたい」「だぁめ。お子様はあと二年待ちなさい。二年経ってもこんなもん吸わなくていいけど」違うよ、今あなたが吸ってるのが、欲しいの。
「なぁ」その日はいつものように、ソファに並んで座っていて。「んー?」あいつは共通で好きなアーティストの新曲に夢中で。「キスしていいか?」身体は音楽に合わせて小刻みに揺れていて。「ん?」俺はあいつの腕を引っ張って。「もう耐えるの、飽きたわ」あいつは目を見開いて。
「なぁ知ってた? 三位一体ってどっかのお偉いさんとその嫁と嫁の愛人が仲良くやっちゃってたことを言うらしい」「なにそれ? 節操なーい」「お前が言うなよ」「それで言ったらあたし達全員ろくでなしじゃない? 一ヶ月ごとに男女問わず相手交代だなんて」「その内バチあたるな」
ばいばい、と別れた後、見えなくなるまで見送ろうとしたけれどできなかった。ここが彼と私の境界線なんだと思ったら居られなくなったから。その場から駆けて、でもどこに行けばいいか分からなくて、直感で進んだ先には散りかけの桜の木。この木が満開だった頃、私達は交わったのに。
「先輩、アイス食べます?」残業しているととっくに帰ったはずの後輩が顔を覗かせた。「どうしたのこんな時間に?」「寝不足と眼精疲労で酷い顔になる先輩をちょっとでも楽にしてあげようかなぁと」どつこうと思ったけれど、持ってきたアイスが私の大好物だったから許すことにした。
雨の中、そこに立つ君がどんな顔をしていたかは分からない。しゃがむことも、手を合わせることもなくただ僅かにも動くことなく立ちすくんでいて。見つけてあげなければよかったと後悔した。「――行こっか」こちらを向けた彼女は笑っていたけど、雨の雫で泣いているように見えた。
本当だと答えたら舌噛み切って死んでやろうと思った。「ねぇ、八つ年上の人と付き合ってるって本当?」「うん」あまりにも気の抜けた声だったから死ぬ気が失せてしまった。「飽きられてすぐ捨てられちゃうよ。その前にふりなよ」彼はただ笑うだけだった。「そん時はそん時じゃね?」
あの頃、こうして彼と居酒屋の片隅でグラスをぶつける様を想像した事があっただろうか。「先輩と会ってんの?」「まさか。あんたと会うのが一年に一回だよ? 最後に会ったの二年前」いくらでもできたはずだ。けどそれをしなかったのは、未来なんて必要くらい日々が輝いていたから。
「おかえり」予想はしていたけれど、思った以上に機嫌が悪かった。「男との飲みは楽しかったですか?」「思い出話してきただけだよ」この人とはその内別れるな、直感がそう告げた。後ろから抱きつく。「今この瞬間だって、いつかは思い出になるんだよね」思い出したいかは別として。
意識されてないだろうと思ってた幼馴染に告白したらあっさりOKを貰えた。「え、ほんまにええの?」「……じゃあ断ればええの?」「や、それは嫌やけど、だって」「そういう風に考えてないとか、勝手に決めんといて。私の方が絶対、先に好きやった。ずっと、ずーっと好きやった!」
わざわざ家にまで来て別れの言葉を告げていった奴をベランダから罵倒した後、足に力が入らず部屋に戻ってすぐ座りこんだ。こんな所でのんびりしている暇はない、やることは山積み、落ち込んでないしましてや涙腺が刺激されることもない。それでも。「負け惜しみなんて、誰が言うか」
なんとなく伸ばした髪を好きだと言って、何度も撫でてくれる手が本当に好きで。「勝手に切ったら怒られそうね」「怒るな。勝手なことさせないためにも監視するか」けれど一番好きなのは髪をいじる手じゃなくて、惜しみなくその感情を与えてくれる抱擁。「一緒にいるか、ずっと」
「うーみぃーーーー!」「叫ぶな恥ずかしい!」自転車の後ろに君を乗せて、毎日通る急な坂道を駆け降りる。「これ楽しい。これから通学は頼んでいい? 帰りも」「冗談言うな。帰り地獄じゃねぇか」「わかんないかなぁ、毎日一緒に居たいってことなのに」行きはよいよい。帰りは、。
部屋の電灯が切れた。けれどパソコンを付けているから問題ない。部屋のドアの前に置かれていた食事がなくなった。餓死してもいいと思ってたから問題ない。自分とは対照的に外で一所懸命に働く親友が事故に遭ったとtwitter経由で連絡がきた。迷うことなく部屋から飛び出した。
エレベーターに押し込められた。営業終了後の展望台、監視カメラはオフ、途中乗車もない。箱の中で数分間二人きり。「俺もう、お前を殺しちまいたい」逃げ場のない場所で命を脅かされた。けれど怖くない。「いいよ、ここで殺してくれるなら」ここは、あなたを陥れる完全犯罪現場。
「どう?」「マズイ」通算十回目になる料理査定はまたも不合格だった。「嘘でもいいから一回位『お前の作ったのなら何でも美味いよ』とか言えない?」「マズイもんはマズイ」いつか合格する日は来るのかな。「つーかさ、お前が作れないなら俺が作るから。こんなんで結婚躊躇すんな」
以前より十分早く起きて君の寝顔を見る朝が日常になった。ポストから新聞を取って、コーヒーメーカーの電源を入れて。テレビはうるさいからまだ付けない。顔を洗って歯を磨いたころに君が寝ぼけ眼で起きてくる。勝手に浮かぶ笑顔ってこういうことだったのかと、毎日噛みしめる。
今更君の何を知ったところで失望しないのに、臆病に隠すから私も何も言えなくなってしまった。ずっと一緒にいるのに好きさえ言えない。いっそ離れてしまえば二人とも幸せだと思う。「これからもこのまま?」第三者は皆こう言うから、いつもこう答えた。「もういいのよ、幸せなんて」
(2011.04.01~04.30)
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11.08.27
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