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死刑宣告を出されたみたいだった。


「眼鏡、とって」
腕を伸ばしてもそこまで届かなかったのか、子供みたいな声で要求された。
ベッドの脇にある棚の上に置いてあったそれを取って渡す。
眼鏡をかけた瞬間、三歳老けた。
「マジックみたい」
「しばくぞ」
あまり大きくない躰の比率からしては大きく、やたらゴツゴツした手があたしの髪をかき上げた。
首筋がくすぐったい。弱いの知ってるくせに。
「やだそこ」
「お前はあれだな。一瞬にしてガキに戻れるんだな」
「そこは気を遣って若返ったって言ってよ」
こうして素肌のまま布団にくるまって、誰かの素肌に触れて。
まるでじゃれあってる猫みたい。全く可愛げのない猫たちだけれど。
「痩せたな」
「え?」
「一ヶ月前より三キロ減。ダイエットは禁止してたよな」
服を脱がす時、一瞬顔を歪ませたのはこれの所為だったか。
相変わらず、すぐばれてしまう。
「ちょっと、夏バテ」
「まだ夏になってないけど」
「大丈夫。さっきいっぱい食べてたでしょ?」
渇いた笑顔で誤魔化す方法を、あたしはこの人と出会う前から知っている。
そして、この笑顔で出し抜けない人を、一人だけ知っている。
ほら、今も、厳しい顔。
「骨と皮だけの女って抱き心地よくないんだよな」
「そこまでじゃないでしょ」
「その内そうなりそうで怖い。そうなったら怖くてもう抱けない」
死刑宣告を出されたみたいだった。
触れてもらえないなんて、死ぬ。
食べればいいの? もっと脂肪つければ?
「おい、追い込むな」
知らない間に爪を噛んでいた。癖。手を口元から離される。
そのまま引き寄せられた。
体温。直。あったかい。好き。
「言い方悪かった。ちゃんと飯食おう。一緒に食べるから。もう、お前が何かして罵倒する奴は、居ないんだ」
抱きしめられる腕に力が入った。でもこんなの、ちっとも本気じゃない。
でもこれ以上強くされたら、きっとあたしは悲鳴を上げてしまう。
人間って本気で悲鳴を上げる機会が何回あるのだろうか。
女の人は出産で叫ぶかな。じゃあそれ以外で。
実際のところそんなにないんじゃないかと思う。サスペンスで腐るほど聞けるけど。
悲鳴なんて上げない方がいいに決まっている。
上げた時の恐怖や苦痛や涙なんか、ろくでもない。
「仕事忙しいじゃん……無理しちゃだめだよ」
あたしなんかの為に。
「お前に飯食わせる為に稼いでくるからいい。それ以上は要らん」
涙が出そうだった。悲鳴を上げる時の苦しい涙なんかじゃない。
潰してしまうのは分かってる。駄目にしてしまうと気付いてる。
それでも、この腕を離すことなど、出来やしない。

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